冬、ベランダは雪に閉ざされる。
太陽の恵みを与えてくれる場所に、
巨大な雪山が出現するのだ。
ベランダを遊び場とするパフモモにとって、
過酷な季節の到来である。

足の短いパフにとって、
柔らかい雪は厄介な障害だ。
しかし雪の足場を得て
普段嗅ぐことのできない鉢植えの臭いを
嗅ぐことができる。
だからパフは登る。
臭いを嗅ぐことが彼の使命だからだ。

垂直に切り立った雪壁は
容赦なくパフの行く手をはばむ。
しかしパフは怯まない。
まだ見ぬ頂上に向けて
懸命に登りつづける。

モモが雪山に挑むのは、これが初めてだ。
足の長さではパフより有利に立つモモだが、
大自然の猛威はその程度のアドバンテージなど
無にしてしまう。
未体験の世界に戸惑いながらも
モモは果敢に挑戦する。

いつ果てるともなく続く雪道を、
黙々と歩みつづける二頭の犬。
この踏破行は
雪解けの季節を迎えるまで続けられるのだ。